病院の経営管理、医療管理、保険制度
診療情報管理士の勉強をしているときの覚書。
病院会計準則
病院経営の透明性を確保し、健全な運営を支えるための「病院専用」の会計ルール。
- 本業の収益を「医業収益」と呼ぶ。
一般企業の「売上高」にあたるもので、入院診療収益や外来診療収益といった活動ごとに分けて報告。 - 補助金の使い道を明確にする。
国から受け取った補助金を特別に管理するルールがあり、税金が正しく医療のために使われているか分かるようになっている。 - 病院特有の財産を示す
高額な「医療用器械備品」や「医薬品」など、病院ならではの資産を管理するための科目が定められている。
BCP(Business Continuity Plan): 事業継続計画
患者の命を守り、最低限の医療機能を維持し、できるだけ早く通常の状態に戻すための具体的な行動計画。
2024年度(令和6年度)の診療報酬改定によって段階的に義務化。
一部の施設基準の中に「災害への備えとしてBCPを策定し、研修・訓練を定期的に実施していること」といった趣旨の要件が盛り込まれた。
BCM(Business Continuity Management): 事業継続マネジメント
BCP + その計画を機能させるための継続的な取り組み。
BCMは、よく「PDCAサイクル」で説明される。
計画だけでなく継続的な経営活動の一環としてBCPとセットで説明される。
地域連携パス
地域連携パスとは、一人の患者さんの治療を、地域の複数の医療機関(病院、診療所、リハビリ施設など)が協力して、切れ目なくスムーズに行うための「共通の治療計画書・スケジュール表」のこと。
地域連携パスは、「いつ、どこで、どのような治療やケアを受けるか」という一連の流れを時系列で示した計画書。
地域連携パスは、退院支援計画を標準化・具体化したツール。
キューバの医療
キューバは「国民全員に平等な医療を無料で提供する」ことを最優先する社会主義国家のモデル。
医療は国民の権利であり、国が無料で提供するべきという考え方。
医師は国に雇われており、給料も国から支払われる(国家公務員)。
給料は他の職業と比べてあまり高くない。
キューバ医療の財源はすべて国の予算。
キューバは世界中に医師を派遣しており、その派遣先国から得られる報酬も重要な外貨収入源となり、国内の医療制度を支える一助となっている。
キューバ医療の問題点
- 国の経済難、特にアメリカからの長年の経済制裁の影響で、最新の薬や医療機器、さらには包帯や消毒液といった基本的な物資まで不足しがち。
- 病院や診療所の建物が古く、衛生環境に問題を抱えているところも少なくない。
- 医師は国家公務員で給料が非常に安いため、生活のために副業をしたり、より良い待遇を求めて海外に亡命したりするケースが後を絶たない。
キューバの医療外交
医療サービス輸出は、キューバにとって観光業をもしのぐ最大の外貨獲得源となっている。
- キューバ政府が、相手国政府(例:ブラジル、ベネズエラ、中東の産油国など)と契約を結ぶ
- 数千人規模の医師や看護師を相手国に派遣し、現地の医療機関やへき地で医療活動に従事
- 相手国政府は、その対価としてキューバ政府に多額の報酬を支払う。
- 災害やパンデミックが発生した国へ、無償または非常に安価で医療チームを派遣し、「人道の国キューバ」というブランドを確立。
キューバの医師たちは薄給で働かされ、劣悪な待遇から、派遣先で亡命を希望する医師が後を絶たない。
対して、日本の国際医療協力は、主に政府開発援助(ODA)の一環として行われる。
財源は日本の税金(ODA予算)。
その目的は、技術指導・人材育成が中心。
キューバの医療外交は「ビジネスモデル」。
日本の活動は先進国としての国際的責務を果たすための「国際協力」という位置づけ。
医師と保険医の違い
医師:病気やケガを治すための国家資格を持っている人。
保険医:医師免許を持ち、さらに「健康保険を使って診療しますよ」という登録をした人。
例えると
医師免許 = 自動車の運転免許
保険医の登録 = タクシーの営業許可
病院の医者はほぼ全員が医師であり、かつ保険医。
医療介護総合確保推進法
2014年(平成26年)に制定。
財源は消費増税分(5% → 8%)。
医療介護総合確保推進法の目的は、住み慣れた地域で医療や介護を受けながら暮らし続けられる「地域包括ケアシステム」を全国に作ること(地域完結型)。
主な変更点
- 都道府県ごとに専用の基金(消費税増税分:5% → 8%)が用意され、独自の対策が可能になった。
- 都道府県に「医療と介護をセットで考えなさい」と法律で義務付けた。
- 国、都道府県、市町村の役割分担が明確になった。
基金の使い道(計画と実績)は、事業を行う各都道府県が、ウェブサイトなどで公表することが法律で義務付けられている。
DPC(診断群分類)とは?
DPCは病院経営の改善と効率化を促す狙いで2006年度(平成18年度)に本格導入された。
DPCを一言でいうと、入院したときの医療費の計算方法のこと。
(外来は基本的に出来高払い)
- 今までの出来高払い方式は、レストランで単品注文するようなもの。
- DPC方式は、レストランでコース料理を注文するようなもの。
同じ病気・同じ治療なら、医療費が大きく変わらない。
病院側は、決められた日数の中で効率的に質の高い治療を提供しようと努力するため、結果的に入院期間が短くなる傾向がなる。
DPC方式でも手術やリハビリテーションなどは出来高払いで計算され、コース料金に上乗せできる。
DPCの定額料金は、診療報酬というマスターメニューブックの価格をベースに作られている。
このため原則として2年ごとに改定される。
2026年度に導入される算定共通モジュールを利用すれば、DPCの複雑なロジックを意識する必要がなくなるはず。